「給与のデジタルマネー払い」解禁について(2023/6/1)
2023年4月から、「給与のデジタルマネー払い」が解禁になりました。
会社は、労働者の同意を得た場合には、一定の要件を満たすものとして厚生労働大臣の指定を受けた資金移動業者の口座への資金移動による賃金の支払が可能となります。 厚生労働省リーフレットはこちら
4月から資金移動業者からの指定申請受付開始で、審査に数か月かかることが見込まれているということと、まだ指定を受けた資金移動業者やサービス内容は明らかになっていませんので、「給与のデジタルマネー払い」を検討されている企業様は、まずはその準備から進めていくことになります。
<導入の検討> ”デジタルマネー”といっても、交通系電子マネー、流通系電子マネーなど・・・色々ありますが、今回のデジタルマネー払い方法として解禁の対象とされるのは、厚生労働大臣が指定した資金移動業者のみですので、注意が必要です。
少し個人的な意見にもなりますが、デジタル化・キャッシュレス化が急速に進んでいるとは言え、まだまだデジタルマネーというものに違和感や不信感を持っている方は多くいらっしゃるのではないかと思っています。仮に自社内の従業員のほとんどがデジタルマネーに不信感を持っている方だったりすると、「給与のデジタルマネー払い」の導入の話をすると、会社と従業員の信頼関係に悪い影響を与えないとも言い切れません。 「給与のデジタルマネー払い」は、会社に導入義務がある訳ではないので、まずは意識調査・アンケートを実施して、自社内にニーズがあるかどうか等の状況把握をし、尚且つ運用体制の構築が可能か?(業務増加に対する対応が可能か?)等をよく考えた上で、導入に関しては慎重に検討すべきであると私は考えます。
<就業規則・労使協定> 導入するということになると、給与の支払いに関することですので、就業規則(賃金規程)の変更は必須です。また、労使協定の締結も必須となっています。また、毎月の給与支給日に従業員に渡す給与明細書の項目の変更も必要です。 (例えば、銀行口座への支払分を「振込支給額1」、デジタルマネー口座への支払い分を「振込支給額2」にする等・・・)
※就業規則(賃金規程)の変更内容や、労使協定の締結内容に関しては、メール等にて弊所までお問合せください。
<労働者の同意、必要事項の説明> デジタルマネー払いをするためには、労働者の同意を得た上で、労働者の指定するデジタルマネー口座に給与を支払わなければなりません。デジタルマネー払いを強制したり、業者を勝手に選定したりすることは絶対にできません。 省令によると、同意を得る際の要件は以下の2要件になります。 必要事項の説明に関しては、滞留規制(口座の上限金額など)、破綻時の保証、不正引き出しの補償、換金性、アカウントの有効期限などの説明が必要となります。ただ、会社側でこの事項を説明するのは非常に負担が大きいということもあり、資金移動業者に委託をすることが認められています。 (同意に関しては会社が行う必要あり。) ※厚生労働省HPにある同意書の様式例には、裏面に説明が必要となる項目が記載されていましたので、一度ご確認ください。)⇒ 厚生労働省の関連ページはこちら
以上、「デジタルの波がいよいよ給与にも来たか・・・」というふうにお感じになる方も多いのではないでしょうか。私自身がお金に関してはあまりデジタルな人間ではないというのもありますが、皆さんが「デジタルマネー」というものにもう少し慣れてきてからの方が良いような気がしています。 繰り返しになりますが、今回の「デジタルマネー払い」は会社の義務ではありません。ですので無理をして導入する必要はないと思います。管理部門で給与関係のお仕事をされている方にとってみれば、管理する情報が増えるわけですから、業務内容が変わり、仕事量も増える可能性がありますので、無理に導入はせずに、社内のニーズ分析・管理体制づくり等の検討から始められることをお勧めいたします。
- 金融機関の口座又は証券総合口座への賃金支払も合わせて選択できるようにする。
- デジタルマネーによる給与支払について必要な事項を説明する。
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